メンタルケア

【生活音のストレス】電子レンジの「ピーピー」音で眠れない夜

こんにちは、佐々木真由美です。 神奈川県で80代の母とふたり暮らしをしながら、在宅介護をしています。

在宅介護を続けるなかで、私が想像していなかった形でストレスを感じたのが、「生活音」でした。 排泄や食事、移動など、介護に直結する場面ではなく、もっと生活の背景にある、日常の“音”。 その中でも特に、私を苦しめたのが——夜中に鳴り響く電子レンジの「ピーピー」という操作音です。

たった数秒のこと。 それでも、その音がもたらすストレスは計り知れず、ある夜などは一度鳴っただけで目が冴えて眠れなくなってしまいました。

「どうしてこんな音にここまで反応してしまうのだろう?」 自分でも戸惑いながら、その原因と向き合い、いくつかの対策を試してきました。 この記事では、そんな“生活音ストレス”との向き合い方と、私なりの折り合いのつけ方を紹介したいと思います。

真夜中の「ピーピー」に目が覚める

母は夜中でも目が覚めると、ふらりとキッチンへ向かい、軽食や飲み物を取ろうとすることがあります。 温めた牛乳や、ほんの小さなおにぎり——そのときに使う電子レンジが、問題の発端でした。

レンジでチンしている時間はほんの数十秒。 けれど、静まり返った深夜の室内で響き渡る「ピーピー!」という甲高い電子音は、まるで耳を突き刺すような鋭さを持って私の眠りを妨げました。

目が覚めた瞬間、「また鳴るかもしれない」と身構えてしまう。 その意識が脳から離れず、ウトウトしかけても、ちょっとした物音で覚醒してしまう。 結果として、眠った気がしないまま朝を迎える日が何度も続きました。

真由美

“生活音”とひとことで言っても、介護のなかではそれが時に「心の地雷」になることもあるのだと、私はこの経験で強く実感しました。

音に敏感になる自分を責めない

最初は「こんなことでイライラするなんて心が狭い」「私は器が小さい」と思って、何度も自分を責めていました。 「介護してもらってる側に文句を言うなんて」と罪悪感すら覚えることもありました。 でも、実際には日々の疲れやプレッシャー、慢性的な睡眠不足が積み重なって、 たとえ一瞬の電子音でも、それが「限界の引き金」になることは十分にあるのです。

私の場合、「音を敵視しすぎない」「イライラしてもいい」と自分に許可を出すようになってから、少しずつ気持ちが楽になっていきました。 生活音を完全に排除することは難しくても、それに振り回される自分を責めない。 そう決めただけでも、心がふっと軽くなる瞬間が増えていったのです。

真由美

音への敏感さは、心が弱っているサインでもあります。 だからこそ、その感情を否定せず、自分自身の心の状態に目を向けてあげることが、何よりのケアになると感じています。

私が試した3つの対策

睡眠を妨げる“生活音”に対して、「どうにかしたい」と思っても、すぐに解決できるものではありません。 ましてや、それが介護を受ける家族の行動に起因しているとなると、言い出す側の気持ちにも迷いが生まれます。

でも、音のストレスを放っておくと、心と身体のダメージはじわじわと蓄積していきます。 だからこそ、自分の睡眠やメンタルを守るために、できる範囲で「環境を変える工夫」が必要だと私は思うようになりました。

ここからは、私が実際に試してみて効果を感じた3つの対策を紹介していきます。

1. 電子レンジの「音量オフ」設定を探す

機種によっては、電子レンジの操作音や終了音をオフにできる設定があります。 母が使っていたレンジにはその機能がなく、最初は音を小さくする方法も探しましたが限界がありました。

悩んだ末に、私は“静音モード付き”の電子レンジに思い切って買い替える決断をしました。 そこまで高価なモデルではなく、必要最低限の機能に絞ったもの。 けれど、それだけで夜の生活環境ががらりと変わりました。

「ピーピー」と鳴らないだけで、これほどまでに睡眠の質が変わるのかと驚いたほどです。 母も特に不便なく使ってくれており、お互いにとってストレスの少ない選択となりました。

真由美

介護生活では、「我慢し続けるより、一歩踏み出して“買い替える”方が安くつく」こともある。 この経験を通して、私はそう感じました。

2. 寝室とキッチンの間に遮音クッションを置く

物理的な音の遮断も、私にとっては大切な対策のひとつでした。 最初は「家の構造なんて変えられないし…」と半ばあきらめていましたが、実際には意外と手軽にできる方法がいくつもあると知ってから、気持ちが前向きになりました。

防音カーテンや吸音パネルなど、本格的な設備を取り入れるのは費用的にもスペース的にもハードルが高かったので、私は“できる範囲の工夫”に焦点を当てました。

たとえば、カラーボックスの背面にクッションや毛布を詰めて簡易的な防音壁を作ること。 これは見た目は少々雑でも、音の通り道を和らげるにはかなり効果がありました。

私の家では、キッチンと寝室の間にある廊下の一角にこの“音の壁”を設置し、さらに家具の位置を少し変えて音の反射方向を調整しました。 結果、ほんの数デシベルの違いでも、夜中の静けさの中では大きな安心感につながりました。

真由美

物理的に完璧な遮音ができなくても、「工夫をした」という安心感自体が、心のストレスを軽減してくれたのだと思います。

3. 「音が鳴るのは元気な証拠」と視点を変える

これはメンタル的な対策になりますが、私には非常に効果がありました。

ある晩、寝不足で疲れ切っていた私は、いつも通り深夜に響いたピーピー音にイライラし、思わず枕を叩きそうになりました。 でもふと、「この音が鳴っているということは、母がまだ自分の足でキッチンまで行けて、温かいものを自分で用意できているということだ」と考え直したのです。

その瞬間、ピーピー音が“迷惑な雑音”から、“生活のリズムの証”のように聞こえてきました。

もちろん、現実的にはうるさく感じる日もあります。 眠れない夜は今でもあります。 でも、「音がしない夜」の方が、私はもっと怖い。

「今日は静かだな……。何かあったんじゃないか」 そんな不安に包まれて眠れなかった夜が何度かあったからこそ、 “音がする”ことの安心感を実感できるようになったのです。

真由美

完璧な静寂を求めるのではなく、その生活音の裏にある“元気な証”を受け取るようになったことで、私の心の中で「騒音の意味」が少し変わりました。

夜の生活音と、どう向き合っていくか

介護生活の中では、ほんの些細なこと——それがたとえば、電子レンジの「ピーピー」という音のようなものであっても、心のバランスを崩す引き金になることがあります。

大切なのは、「こんなことでつらくなるなんて」と自分を責めすぎないこと。 誰かのために毎日を回しているからこそ、些細なストレスが心の中に重たく積もっていくのです。

私は、電子音に対するストレスと向き合いながら、「完璧に静かな夜」を目指すのではなく、「その音をどう受け止めるか」という視点に切り替えていくことで、少しずつ夜の静けさと和解できるようになりました。

生活音は、時に疲労や苛立ちの象徴にもなります。 でも同時に、それは“生活が続いている証”でもある——そう考えられるようになったことが、私の中ではとても大きな変化でした。

真由美

もし今、夜中の生活音に悩んでいる方がいたら、その音はあなたの我慢の限界を知らせるサインかもしれません。 そして、それに気づけたあなたは、すでに自分の心にちゃんと耳を傾けている人です。