こんにちは。佐々木真由美と申します。神奈川県で在宅介護をしながら、80代の母とふたり暮らしをしています。
在宅介護を続けるなかで、たくさんの悩みや壁にぶつかりながらも、少しずつ試行錯誤を重ねてきました。自宅で親の介護を経験し、生活の中で感じたリアルな気づきや工夫を、同じような立場にいる方に届けたいという思いで情報発信をしています。
介護の負担を一人で抱え込まず、ときには制度やサービスをうまく活用しながら、無理のない介護生活を一緒に目指していきましょう。
介護保険サービスを利用する際に必ず必要になるのが「介護サービス計画」、いわゆる“ケアプラン”です。制度の中では当然のように出てくる用語ですが、初めて介護に関わる方にとっては、非常にわかりにくい言葉だと思います。
「ケアプランってそもそも何?」「勝手に決められてしまうの?」「自分で作ることはできるの?」——私も母が要介護2と認定されたとき、まさにそんな疑問を抱えていました。役所で配布された冊子にも説明は書かれていたものの、どこか他人事のように感じてしまい、読み進めるのが正直億劫でした。
しかし実際には、ケアプランこそが“その後の介護生活を左右する大事な土台”であることを、後になって強く実感するようになります。母の生活をどう支えるか、家族の負担をどう調整するか、ケアマネジャーさんと一緒に考えながらプランを練ることで、日々の介護が格段にスムーズになりました。
この記事では、私の体験も交えながら、ケアプランの基礎知識や作成の流れ、そして失敗しない関わり方まで、これから介護に向き合う方の目線でわかりやすく解説していきます。
ケアプランとは?|介護の設計図のようなもの
ケアプランとは、介護が必要な本人に対して「どのようなサービスを、どの頻度で、どんな目的で提供するか」を整理し、文書としてまとめた“介護の設計図”のようなものです。
●デイサービスは週に何回利用するのがよいか?
●訪問介護では具体的にどんな支援(入浴・排泄・掃除など)が必要か?
●車いすや手すりなど、どんな福祉用具を導入すべきか?
●本人が望む生活の目標(例:週に1回は散歩したい、趣味を続けたい)
こうした内容を、ケアマネジャーが中心となってヒアリングし、本人や家族の意向、医師の意見、生活状況をふまえてサービス提供事業所と連携しながら一つひとつ計画に落とし込んでいきます。
私の場合も、最初は「なんとなく利用できるサービスを組み合わせればいいのかな?」と思っていましたが、実際にケアマネジャーさんが提案してくれたプランを見て驚きました。母の生活リズムや好み、私たち家族の都合までを丁寧に反映させた、まるでオーダーメイドのような内容だったのです。
このプランがあるからこそ、訪問介護員さんもスムーズに支援ができ、通所施設とも安心して連携が取れます。ケアプランがなければ、介護保険サービス自体を利用することができません。 つまり、制度の出発点であり、介護生活全体の土台となるものなのです。
「プラン」という言葉に最初は他人事のような印象を持っていましたが、実際には“今の暮らしをどう整えていくか”を一緒に考えてもらえる心強い設計書でした。丁寧に向き合ってくれたケアマネさんのおかげで、母にも私にも合った形が少しずつ見えてきたように思います。
ケアプランの作成は誰がする?自作も可能?
基本的には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランの作成を担当します。これは制度として定められており、要介護認定を受けた方が介護保険サービスを利用するための大前提となるステップです。
具体的な流れとしては、以下のようになります:
●要介護認定を受けたあと、ケアマネジャーと契約
●自宅を訪問して、本人と家族の生活状況や希望をヒアリング
●必要なサービスの種類や頻度を提案し、サービス提供事業者と調整
●ケアプランを作成し、その内容を丁寧に説明
●本人・家族が内容に納得すれば、プランが確定
このプロセスはすべて無料で提供されており、費用は介護保険から全額支払われます。つまり、「相談したいけどお金がかかるのでは…」という不安は不要です。
ちなみに、「セルフケアプラン」といって、自分自身や家族が計画を立てることも制度上は可能です。ただし、以下のようなデメリットがあります:
●必要な書類が非常に煩雑で専門知識が求められる
●各サービス提供事業所との連絡・契約・調整をすべて自分で行う必要がある
●プランの内容に漏れやミスがあった場合でも、自己責任となる
私自身も、当初は「自分で作った方が柔軟にできるかも」と思ったことがありました。しかし実際に母の状況や希望を丁寧に聞き取り、的確なサービス提案をしてくださったケアマネジャーさんの姿を見て、「この人にお願いして本当によかった」と心から感じました。
慣れない手続きに追われるよりも、信頼できる専門家と一緒に進めていくことで、介護のスタートがとても安心なものになります。
ケアプランって“制度の書類”というイメージが強かったのですが、実際には暮らし方そのものを考えるための大事な対話の場なんだと思います。最初はわからないことだらけでも、丁寧に説明してくれるケアマネさんがいれば大丈夫。私もたくさん助けてもらいました。
ケアプランを作るうえで意識したいこと
プランをケアマネさんに“お任せ”にすることももちろん可能ですが、実際の介護現場では、介護する側・される側が主体的に関わることがとても大切です。特に在宅介護では、日常のちょっとした違和感や使いづらさが、積み重なると大きなストレスになります。だからこそ、最初の段階から遠慮せず意見を伝えることが重要なのです。
以下のようなポイントを意識することで、より実情に合った、満足度の高いケアプランになります:
●本人の「こうしたい」「これなら続けられそう」といった希望を具体的に伝える
●家族の介護負担や在宅勤務、通院などのスケジュール上の制約も正直に共有する
●訪問介護の曜日や時間帯についても、なるべく無理のない希望を伝える
●利用中に「合わないかも?」と感じたサービスは、その都度見直しをお願いする
私も実際に、母の通所リハビリの日程が私の仕事と完全にかぶってしまい、朝の送り出しが毎回バタバタになってしまったことがありました。「少しのことで変えてもらえるのかしら…」と不安を抱きつつ相談してみたところ、ケアマネさんは快く「曜日をずらして調整しましょう」と即対応してくださり、驚くと同時に大きな安心を感じました。
介護を受ける側だけでなく、支える側の私たち家族にとっても、ケアプランは生活の軸になります。だからこそ、遠慮せずに声を出すことが何より大切。小さな希望や不安も伝えることで、より安心できる介護の形に近づけると、私は日々感じています。
ケアプランは定期的に見直しを
ケアプランは、一度作って終わりではありません。むしろ、生活の変化に合わせて“育てていく”ような計画書だと私は感じています。
たとえば、
●本人の体調がよくなった、または悪化した場合
●家族の介護体制に変化があったとき(同居の開始や転職など)
●利用しているサービスに不満が出てきたときや、これまで使っていなかった支援を取り入れたいと感じたとき
こうした節目では、その都度ケアプランの見直しが必要になります。これは制度的にも認められており、遠慮する必要はまったくありません。
また、少なくとも月1回はケアマネジャーが訪問し、プラン通りにサービスが提供されているか、不具合がないか、家族の様子はどうかなどを丁寧に確認してくれます。小さな変化でも気づいてくれることがあり、私自身「ちょっと最近うまく回っていないかも」と気づくきっかけになったこともありました。
私の場合も、母の認知症の症状が少しずつ進みはじめ、「以前は通えていたデイサービスに行きたがらなくなった」という状況が起こりました。最初は気持ちの問題かと思っていましたが、ケアマネさんに相談したところ、「別の施設に変えてみましょうか」と柔軟に提案してくれ、結果として母も穏やかに過ごせるようになったのです。
ケアプランは、生活とともに変わっていくもの。変えることを「失敗」と感じる必要はまったくありません。むしろ、より良い形を見つけるための自然なプロセスだと思います。私は何度も見直しを重ねながら、母にとっても自分にとっても無理のない介護を模索しています。
ケアプランは、家族の暮らし方も支える
ケアプランは、本人だけに向けたものではなく、介護に関わる家族全体の暮らし方や支援体制を形にしていくための重要なツールです。
制度上は「介護保険サービスを利用するための計画書」と位置づけられていますが、実際にはそれ以上の意味を持っています。私は母の介護を始めてから、このプランを通じて「私たち家族がどう暮らしていきたいか」「どこで困っているのか」「どんなサポートが必要なのか」といったことを、初めて言葉にして整理する機会を持ちました。
ときには、「本当にこのままでいいのか」と立ち止まるきっかけにもなり、見直すことで改善されていく生活の形に、希望を感じたこともありました。ケアプランは、“制度上の書類”にとどまらず、日常の悩みをすくい上げ、未来の介護をより良い方向に導くための“対話の道具”でもあると私は考えています。
介護は、“がんばりすぎない工夫”も大切です。ケアプランという仕組みをうまく使うことで、私はたくさんの人の手を借りながら、母との時間を大切にする余裕が持てるようになりました。調整は何度でもしていいんです。あなたの家族に合った形を、一緒に模索していきましょう。