こんにちは、佐々木真由美です。 神奈川県で在宅介護をしながら、80代の母とふたり暮らしをしています。
介護をしていると、予想もしなかったタイミングで買い物に行けなくなることがあります。 母の体調が急に悪化して外出できなくなったり、強い風雨や猛暑・寒波で外に出られなかったり、自分自身の体が限界で布団から起き上がれなかったり……。 そんな日は、買い物どころか台所に立つことすら、ひと苦労です。
でも、そんなときだからこそ試されるのが、「家にあるものでなんとかする力」だと感じています。 「ちゃんとした料理」じゃなくてもいい。「豪華な見た目」じゃなくてもいい。 とにかく“今日を越える”ための食事を、どうやって用意できるか。
私自身、何度もそうした日を経験してきました。 そして気づけば、「これは正直ギリギリだったかも……」というメニューが、いつしか私の暮らしを支える心強い味方になっていました。
今回は、そんな“なんちゃってごはん”の中から、特に印象に残っているものをいくつかご紹介します。 同じように「今日はもう無理かも」と感じた方がいたら、少しでもヒントになればうれしいです。
キャベツ1/4と卵だけで「ふわふわキャベたま丼」
・キャベツ 1/4玉(ざく切り)
・卵 2個
・めんつゆ 適量
・ごはん 2膳
→キャベツをフライパンで軽くしんなりするまで炒め、めんつゆで全体に味をつける。 →別のボウルで溶いた卵を回し入れ、半熟状に火が通ったところで火を止める。 →炊きたてごはんの上にたっぷりと乗せて、完成。
とにかく簡単なのに、食べ応えはしっかり。 キャベツの甘みとめんつゆの旨み、ふわふわ卵の食感が一体となって、 「冷蔵庫にこれしかなかった」とは思えないほどの満足度を与えてくれます。
私の母は、噛む力や飲み込む力が少し弱くなってきているので、 こういった“とろみ”のあるおかずはとても助かります。 スプーンですくって食べられるのも安心ポイント。
ちなみに私は、自分用には黒胡椒や七味をかけてアレンジすることもあります。 1品でごはんも野菜もタンパク質も摂れる、我が家の非常食的レギュラーメニューです。
食パンの耳と冷凍野菜で「なんちゃってキッシュ風」
・冷凍ブロッコリーやミックスベジタブル(好きな量でOK)
・食パンの耳(2枚分ほど。乾燥していてもOK)
・卵 1個
・牛乳 大さじ2〜3
・塩こしょう 少々
→食パンの耳は細かく刻んで耐熱容器の底に敷き詰める。パンがクッションになってくれるので、焦げにくく食感もやわらか。 →その上に凍ったままの冷凍野菜を広げる。 →卵と牛乳をよく混ぜて、塩こしょうで味を整え、上から流し込む。 →トースターで10分〜12分。焼き色がつくまでしっかり焼くのがポイント。
冷蔵庫の中に「使い切れなかった野菜」があるときにも便利なレシピです。 特に、冷凍していた野菜や、硬くなってしまった食パンの耳など、「ちょっとした余りもの」が見事に蘇ります。
本格的なキッシュとは比べものになりませんが、香ばしく焼けた表面と、卵のふんわり感は十分ごちそう感あり。 チーズを加えれば風味も栄養もアップしますが、なくても十分成立します。
私自身、時間も体力もない夕方に「あと一品どうしよう」と思ったときによく助けられました。 母もこのレシピが好きで、「外で食べるよりこっちのほうが好き」と言ってくれたこともあります。
簡単・節約・やさしい味の三拍子。 慌ただしい日こそ、こんな一皿が心を救ってくれます。
鯖缶と梅干しで「さっぱり炊き込み風ごはん」
・鯖の水煮缶 1缶(汁ごと使用)
・梅干し 1〜2個(種を取ってもそのままでもOK)
・しょうゆ 小さじ1程度(風味付け)
・米 2合
→お米を研いで炊飯器に入れ、通常の水加減に調整した後、鯖缶の汁ごと加える。 →鯖の身をざっくりほぐして加える(炊いたあとに混ぜてもOK)。 →梅干しを上に乗せ、しょうゆを軽く回しかけて炊飯スタート。
炊き上がったあとに梅干しの実を崩して混ぜると、全体にほどよい酸味と塩気が広がり、さっぱりとした味わいになります。
このレシピは、体が重くて台所に立つ気力もわかない日、食欲が湧かない日でも、不思議と食べられる不動のレギュラーメニューです。 調味料が少なくても成立するのは、鯖缶の旨みと梅干しの酸味のおかげ。
私の母も、食が細くなったときに「これなら食べられる」と言ってくれることが多く、何度も助けられました。 常温保存できる缶詰と、常備してある梅干し——このふたつがあるだけで、ひとまず安心できます。
「何もない日」を支えてくれる、心強い一品です。
「なんとかする力」は、暮らしの自信になる
買い物に行けない日が何日も続くと、「もうどうにもならないかもしれない」と気持ちが沈んでしまうことがあります。 冷蔵庫の中身を見ても、なんだか何も作れない気がして、頭が真っ白になってしまう。 でも、そんなときこそ一呼吸おいて、ストックの奥や冷凍庫の隅をのぞいてみると、「あ、これとこれを組み合わせればいけるかも」と、希望の糸口が見つかることがあります。
私自身、そんな“なんちゃってごはん”に何度も救われてきました。 レシピ通りじゃない。彩りも足りない。けれど、“今ここにあるもので工夫した”という事実が、 「ちゃんとできてないかも」と感じる自分の中の小さな罪悪感を、静かに溶かしてくれたのです。
大切なのは、完璧であることではなく、諦めなかった自分を認めること。 「誰かに褒められなくても、今日もなんとかやりくりできた私、ほんとにえらいよ」 そう心の中でそっとつぶやくことで、明日ももう一日だけがんばってみようという気持ちが湧いてきます。
この記事が、誰かの「買い物に行けない日」の中で、ふっと気持ちをほぐすきっかけになれたら、こんなに嬉しいことはありません。