介護保険・公的制度

訪問介護(ホームヘルプ)とは?利用の流れと費用を解説

こんにちは。佐々木真由美と申します。神奈川県で在宅介護をしながら、80代の母とふたり暮らしをしています。

在宅介護を続けるなかで、たくさんの悩みや壁にぶつかりながらも、少しずつ試行錯誤を重ねてきました。自宅で親の介護を経験し、生活の中で感じたリアルな気づきや工夫を、同じような立場にいる方に届けたいという思いで情報発信をしています。

介護の負担を一人で抱え込まず、ときには制度やサービスをうまく活用しながら、無理のない介護生活を一緒に目指していきましょう。

高齢者の介護サービスのひとつとして、耳にする機会が多い「訪問介護(ホームヘルプ)」。自宅で過ごすことを前提にした支援という点で、多くのご家庭にとって非常に身近な選択肢だと思います。

私自身、母の介護が必要になったとき、最初に検討したのがこの訪問介護でした。けれど当時の私は、「訪問介護」と聞いても、どこまでのことを頼めるのか、費用はどれくらいかかるのか、誰が来てくれるのか──そうした基本的なことすらはっきり分かっておらず、正直なところとても不安でした。

特に母の場合は、まだ身体介護は必要ではなく、日常のちょっとした手助けや見守りがあれば十分という状況だったので、「この程度のことをお願いしてもいいのだろうか」と遠慮してしまう気持ちもありました。

しかし、実際にサービスを利用してみると、必要最低限のサポートがあるだけで、家族の心の負担が驚くほど軽くなることに気づかされました。そして何より、母自身が「今日はヘルパーさんが来るのね」と嬉しそうに待つようになり、生活に張りが出てきたことが何よりの収穫でした。

この記事では、私の実体験をもとに、訪問介護の基本的な仕組み、利用の流れ、費用の目安までを、できるだけ丁寧に、分かりやすくご紹介していきます。はじめてこのサービスを検討している方の不安を、少しでも軽くできれば嬉しいです。

訪問介護(ホームヘルプ)とは?

訪問介護とは、ホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問し、日常生活の支援や身体介護を行うサービスです。高齢者が住み慣れた自宅で安心して生活を続けられるよう、必要な支援を提供する在宅介護の中心的な役割を担っています。

訪問介護の支援内容は、主に以下の2種類に分かれます。

訪問介護の支援内容

身体介護

入浴、排泄、食事、着替え、体位変換など、直接身体に触れて行う介助全般。特に要介護度が高くなるほど、この支援の比重が大きくなります。

生活援助

掃除、洗濯、調理、買い物など、日常生活を支えるための手助け。本人が一人では困難な家事を代行・補助することが目的です。

ただし注意が必要なのは、「生活援助」はあくまで利用者本人のための支援に限られるという点です。たとえば「家族全員の夕食を作る」「ペットの世話をする」といったことは、介護保険の対象外となり、サービスとして提供されない決まりになっています。

私の母の場合も、最初にこの説明を受けたとき、「それってどこまで頼めるの?」と戸惑いました。でも、実際には買い物の付き添いやちょっとした掃除、簡単な調理など、日常のちょっとした負担を肩代わりしてもらえるだけで、母の気持ちも私の心もずいぶんと軽くなりました。必要最低限の支援があるだけで、介護生活はずいぶん違ってくるものだと実感しています。

真由美

最初は「どこまでお願いしていいのか分からない」と不安でしたが、訪問介護のスタッフさんがとても丁寧に対応してくださり、安心して利用を始めることができました。無理をせず、専門の力を借りることで、家族も本人も心にゆとりが生まれます。

実際に母が利用した内容

私の母が利用していたのは、主に生活援助のサービスでした。週に2回、決まった曜日と時間に訪問してくださるヘルパーさんが、母の生活を支えるために本当にきめ細やかな支援をしてくださいました。

生活援助の例

●買い物(近所のスーパーまでの付き添いと荷物の持ち運び)

●昼食の調理(母の好みに合わせた和食中心の軽食)

●トイレや洗面所の清掃(手すりの拭き取りや排水口の衛生管理なども含む)

母は昔ながらのやり方にこだわる性格なので、最初は他人に家の中を手伝ってもらうことに少し抵抗を感じていました。でも、同じヘルパーさんが毎回来てくださることで徐々に打ち解け、「今日は何を一緒に作ろうかしら」と楽しみにするようになりました。

また、ヘルパーさんがただ作業をするだけでなく、時には母の話をじっくり聞いてくださったり、買い物中に季節の話題を交えながら会話を楽しんでくださったりする姿勢に、私も深く感動しました。

身体介護はまだ不要な段階でしたが、こうして母の暮らしを優しく見守ってくれる存在がいることで、母自身の安心感はもちろん、私自身も「きょうは見守ってもらえる日だ」と思えるだけで気持ちがふっと軽くなったのを覚えています。

真由美

訪問介護は、ただ家事や介助をしてもらうだけではなく、“心の支え”になってくれるサービスでもあります。母の表情が穏やかになっていくのを見て、「頼ってよかった」と心から思いました。遠慮せず、まず一歩を踏み出してみることが大切だと、今は実感しています。

利用までの流れ

「訪問介護を使いたい」と思っても、何から始めればいいのか分からない——これは、私自身がまさに最初に感じた不安でした。制度の仕組みや流れを理解していないと、「いつ、誰に、どこに連絡すればいいの?」と戸惑ってしまう方も多いと思います。

実際に私も、母の介護を考え始めた当初は、いきなりサービスを受けられるものだと誤解しており、ケアマネジャーや地域包括支援センターの存在すら知りませんでした。

でも、一つずつ手順を踏んで進めていけば、誰でも安心して利用を始められます。このパートでは、初めての方にも分かりやすいように、訪問介護を利用するまでの流れを、私の経験をもとに具体的にご紹介します。

要介護認定を受ける

訪問介護を利用するには、介護保険の認定を受けることが第一歩となります。具体的には、「要支援1・2」または「要介護1〜5」と判定される必要があります。これは、市区町村に申請し、訪問調査や主治医意見書をもとに審査を受けて認定されるものです。

私の場合、母が少しずつ家事や買い物を負担に感じるようになってきたことがきっかけで、「もしかしたら支援が必要なのかも」と思い、地域包括支援センターに相談しました。そこからスムーズに申請に進むことができ、約1か月後に「要支援2」の認定を受けました。

この認定が下りて初めて、訪問介護などのサービスを正式に利用する準備が整います。申請は少し手間がかかるように感じるかもしれませんが、専門の窓口が丁寧に案内してくれるので、ひとりで悩まずにまず相談してみることをおすすめします。

ケアマネジャーに相談

地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に連絡を取り、ケアマネジャー(介護支援専門員)を紹介・選任してもらいます。ケアマネジャーは、介護サービス全体のプランを立て、必要な手続きを代行してくれる心強い存在です。

私の場合は、母の要支援2の認定が出た直後に地域包括支援センターへ連絡をし、そこから紹介された居宅介護支援事業所とやり取りを始めました。最初は「どんな方が担当になるのかしら」と不安もありましたが、実際にお会いしたケアマネジャーさんはとても穏やかで、母の生活リズムや性格にも耳を傾けてくれる方でした。

「いきなり全部お任せするのは心配」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ケアマネジャーはあくまで“家族の味方”です。気になることや不安な点は、遠慮せず何でも相談してみてください。

ケアプランの作成

ケアマネジャーとじっくり話し合いながら、本人の状態や家族の希望をふまえて訪問介護を組み込んだケアプラン(サービス計画)を作成します。

このとき、どの時間帯に来てもらえると助かるか、どんな支援が本当に必要か、家族がどこまで関われるのか──そうした細かな点までしっかり話し合っておくことが、後のトラブルや行き違いを防ぐポイントになります。

私の場合も、ケアマネジャーさんが母に「どういう人に来てもらいたい?」と聞いてくれたり、「お昼前後が一番不安な時間帯です」と私が伝えたことで、実際の支援時間や担当者の性別なども柔軟に考慮してもらえました。

真由美

ケアプランは“テンプレート”ではなく、“その人に合わせたオーダーメイド”です。家族の声もきちんと聞いてもらえる場なので、遠慮せず、気になることはなんでも伝えてみてください。

サービス提供事業所と契約

訪問介護を提供する事業所と正式に契約します。ケアマネジャーから複数の事業所を提案されることもあり、利用者や家族の希望や状況に応じて最適な事業所を選ぶことができます。契約前には、サービス内容や担当ヘルパーの体制、利用可能な時間帯、緊急対応の有無などを細かく確認しておくことが重要です。

私の母のときも、ケアマネジャーさんから2つの事業所を紹介され、それぞれの説明を聞いたうえで、より柔軟に対応してくださりそうな事業所を選びました。面談では、ヘルパーの変更希望にも応じてもらえるかどうか、時間の調整がどの程度可能かなどを具体的に質問しました。事業所の方も丁寧に答えてくださり、「ここなら安心してお願いできそう」と思えたことが決め手でした。佐々木真由美からのひとこと契約は単なる手続きではなく、「この人たちに家族を任せても大丈夫か」を見極める大切なステップです。不安な点は遠慮せずに質問し、納得のいくまで確認してから契約するようにしましょう。

サービス開始

事業所が担当ヘルパーを決定し、いよいよサービスが始まります。多くの場合、初回の訪問前に事業所の責任者やヘルパー本人が自宅に挨拶に来てくれる“事前訪問”があり、顔合わせや簡単な生活状況の確認が行われます。

私の母のときも、担当予定のヘルパーさんが事前に訪問してくださり、母の生活スタイルや好きな食べ物、苦手なことなどを丁寧に聞いてくれました。そのおかげで、初回からスムーズにサービスが始まり、母も「あの人なら大丈夫そう」と安心して受け入れることができたのです。

また、初回サービスの際は、事業所のスタッフやケアマネジャーも同席することが多く、不安や疑問があればその場で相談できます。

真由美

「介護サービス開始の日」は、家族にとっても本人にとっても大きな節目です。最初がうまくいくと、その後の流れも安心して任せられるようになります。小さなことでも、不安に思ったらその場で伝える勇気を持ってくださいね。

気になる費用は?

訪問介護の費用は、介護保険制度が適用されるため、自己負担は原則1割(一定以上の所得がある場合は2〜3割)に抑えられています。つまり、利用したサービスの費用の大部分を保険がカバーしてくれるため、比較的少ない負担で継続的に支援を受けることができます。

例えば、要介護2の方が週2回の生活援助(1回45分相当)を利用する場合、自己負担は以下のようなイメージになります。

要介護2の方が週2回の生活援助を利用

●1回あたりの単価:約300円〜350円(1割負担の場合)

●月額の目安:2,400〜3,500円前後(利用頻度や内容によって変動)

もちろんこれはあくまで目安であり、ケアプランに基づく「支給限度額」の範囲内で利用している限り、追加料金は基本的に発生しません。ただし、限度額を超えてしまった場合や、保険対象外のサービス(例:ヘルパーによる趣味のお手伝いや家族分の食事準備など)を希望した場合には、全額自己負担になる点に注意が必要です。

私の母も、最初に利用するとき「高そうで続けられないのでは?」と心配していましたが、実際の負担額を説明すると「それなら助かるね」と安心してくれました。負担が少ないからこそ、無理なく長く使えるサービスだと感じています。

真由美

介護にかかるお金のことって、誰でも最初はとても不安ですよね。私もそうでした。でも訪問介護の費用は思っていたよりもずっと現実的で、「これなら使い続けられる」と実感できました。わからないことはケアマネジャーさんに聞いて、納得してから始めると安心ですよ。

訪問介護は“最初の一歩”としてもおすすめ

訪問介護は、「いきなり施設に預けるのはちょっと…」と感じている方にとって、在宅で始められる非常に柔軟で安心感のある介護サービスです。大切な家族が住み慣れた環境の中で支援を受けられるというのは、本人にとっても、そして支える側にとっても、精神的な負担が少なくて済む大きなメリットです。

特に、身体的な介護まではまだ必要ないけれど、買い物や調理などに少しずつ支援が必要になってきた……という段階では、訪問介護が最も頼りになる存在だと感じました。生活のちょっとしたところに手が届くサービスだからこそ、「今の暮らしを大きく変えずにサポートしてもらえる」という安心感があります。

私の母も、最初は「まだ大丈夫」「人に頼るなんて」と遠慮していましたが、実際にヘルパーさんと接するうちにその気持ちはやわらぎ、今では「今日来てくれるの楽しみなの」と笑顔で話してくれます。そうした変化を見るたびに、訪問介護は“支援”であると同時に“心のつながり”を築く機会にもなっているのだと実感しています。

真由美

訪問介護は、私にとって「ひとりで全部抱え込まなくていい」と気づかせてくれた、本当に心強い支えでした。無理をして疲弊してしまう前に、まずは誰かに相談することが何よりも大切です。ケアマネジャーさんや地域包括支援センターは、思っている以上に親身に話を聞いてくれますよ。