こんにちは。佐々木真由美と申します。神奈川県で在宅介護をしながら、80代の母とふたり暮らしをしています。
在宅介護を続けるなかで、たくさんの悩みや壁にぶつかりながらも、少しずつ試行錯誤を重ねてきました。自宅で親の介護を経験し、生活の中で感じたリアルな気づきや工夫を、同じような立場にいる方に届けたいという思いで情報発信をしています。
介護の負担を一人で抱え込まず、ときには制度やサービスをうまく活用しながら、無理のない介護生活を一緒に目指していきましょう。
高齢の家族を在宅で介護していると、必ず耳にするのが「デイサービス」と「デイケア」という言葉です。私自身、母の介護を始めてからというもの、役所のパンフレットや地域包括支援センターの説明などで何度も目や耳にしました。
けれど、初めてその違いを知ろうとしたとき、正直なところ「結局どっちが何をしてくれるの?」と混乱しました。言葉としては似ていても、実際に提供される内容や雰囲気、目的が異なります。そのため、本人の状態や家族の希望に合った施設を選ぶには、しっかりとした理解が欠かせないと痛感しました。
この記事では、私が母の介護を通じて実際に感じたこと、現場での経験を踏まえて、「デイサービスとデイケアの違い」「選ぶときに重視すべき視点」についてわかりやすくお伝えしていきます。はじめて施設を探す方にも安心して読んでいただけるよう、丁寧にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
デイサービスとは?
デイサービス(通所介護)は、介護保険サービスのひとつで、要介護・要支援認定を受けた高齢者が日帰りで利用する施設です。一般的には、朝に送迎車で自宅まで迎えに来てもらい、夕方に送り届けてもらう、いわゆる“通い型”の支援スタイルになります。
サービス内容には以下のようなものが含まれます。
●栄養バランスの取れた食事の提供(特別食や刻み食の対応もあり)
●入浴介助(機械浴や個別入浴が選べる施設も)
●軽い機能訓練(体操や歩行練習など、日常生活を維持する程度)
●季節のイベントやレクリエーション、趣味活動(折り紙、カラオケ、体操、脳トレなど)
●送迎サービス(自宅から施設までの往復)
これらの支援は、ただ身体的な補助にとどまらず、高齢者の社会参加や孤立防止にも大きな役割を果たしています。
私の母も初めてデイサービスを利用したときは、「知らない人と過ごすのはちょっと…」と戸惑っていました。でも、施設の明るい雰囲気や、スタッフさんのあたたかい声かけのおかげで、次第に笑顔で「また行ってもいいかもね」と言ってくれるようになりました。
家庭での介護負担を軽減する意味でも、デイサービスはとても頼りになる存在です。私自身も、母がデイに行っている間に自分の通院や買い物、家事を済ませることができ、気持ちに少しゆとりが生まれました。
デイサービスは、介護する側にもされる側にも“ほっとできる時間”を与えてくれる場所だと思います。初めての利用に不安を感じる方も多いと思いますが、見学や体験利用を通じて、少しずつ慣れていけるように支えてくれる施設もたくさんありますよ。
デイケアとは?
デイケア(通所リハビリテーション)は、医療機関や介護老人保健施設などで提供される、リハビリ特化型の通所サービスです。通称「リハビリデイ」と呼ばれることもあり、日常生活の自立を目指す高齢者のための支援として位置づけられています。
デイサービスと同様に日帰り利用が基本ですが、最大の特徴は医師の関与と、専門職によるリハビリが中心に組まれている点です。
特徴的なのは以下の点です。
●理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などによる専門的な個別リハビリの提供
●医師の診察や指導のもとで運営され、医療的な管理体制が整っている
●食事、入浴、送迎などのサービスもあり、総合的な在宅支援が可能
特に、脳梗塞や骨折などで身体機能が低下した方にとっては、在宅復帰や生活の質を保つための大切なステップとなります。
私の母も、ケアマネジャーさんから「リハビリ中心ならデイケアも候補に」と提案され、実際に見学に行ったことがあります。リハビリ機器がずらりと並ぶ室内、真剣な表情で歩行訓練をしている利用者さんたち。正直、少し圧倒されたのを覚えています。
母は「ここ、病院みたいだね」とつぶやきました。もちろん、身体機能の維持が大事なのは理解していましたが、母にとってはもう少し“楽しさ”や“癒し”がある空間の方が安心できるように感じました。
デイケアは、しっかりとリハビリに取り組みたい方にとって、非常に心強い存在です。ただし、本人の性格や希望とマッチしているかどうかがとても大切。医療の安心感と、居心地のよさ、その両方を見極めて選んでほしいと思います。
私の経験:母に合っていたのは「デイサービス」
私の母は要介護2で、認知症の症状が少しあります。最初は「リハビリもした方がいいかも」と思い、デイケアを見学しました。ですが、専門的なリハビリ機器や体操プログラムに少し戸惑い、「ここはちょっと大変そう」と本人が感じてしまったようです。
その後、地域のデイサービスを見学したところ、スタッフさんがとても優しく、趣味の折り紙やおしゃべりの時間が豊富。母の表情が自然と和らいだのを見て、「ああ、ここだ」と直感で決めました。
もちろん、状態や性格によって向き不向きはありますが、「本人がどう感じるか」を最優先にした選び方が大事だと実感しました。
失敗しない施設選びのコツ
ここからは、私自身が母の施設選びを経験する中で感じた「失敗しないためのコツ」をご紹介していきます。
施設選びは、情報だけで判断するには限界があるとつくづく思いました。どれも「良さそう」に見えるけれど、実際に通う本人にとって心地よい場所かどうかは、行ってみないと分からないことばかりでした。
私も最初は「家から近いから便利そう」「リハビリができるから安心」と思い込みで候補を絞ってしまい、結果的に母の反応がいまひとつで振り出しに戻ったことがあります。パンフレットを見ただけでは分からない“空気感”や“人のぬくもり”が大切で、これは実際に現地で体感しなければ伝わらないものでした。
母のように少し認知症の症状がある方の場合、「初めての場所に通う」こと自体が負担になることもあります。そのため、できるだけ不安が少なく、居心地がよいと感じられる環境を選んであげることが、長く続けられるかどうかに直結するのです。
では、具体的にどういった点を重視して選べばよいのか。私の体験と反省も含めながら、以下のポイントをお伝えします。
見学は必ず複数行くこと
パンフレットだけでは、その施設の“本当の姿”はなかなか伝わってきません。そこにはサービス内容や設備の紹介が丁寧に書かれていても、実際に利用者がどんな表情で過ごしているのか、スタッフがどれだけ気配りできているのか、現場の空気感まではわかりません。
私も母の施設探しでいくつかのパンフレットを取り寄せて見比べていましたが、正直どれも良さそうに見えて選びきれませんでした。でも実際に足を運んでみると、スタッフの声かけひとつ、掲示物の内容ひとつとっても、その施設の“温度”のようなものが伝わってきて、母の表情にも違いが出ました。
こうした現場での印象は、本人の安心感や通所の継続意欲にも直結します。だからこそ、雰囲気やスタッフの対応を見るには、実際の現場を見るのが一番だと強く感じました。
本人の気持ちを尊重すること
施設選びをする際、家族としてはどうしても「家から近いか」「費用は抑えられるか」「送迎時間は家族のスケジュールと合うか」など、こちら側の都合を優先してしまいがちです。もちろんそれらも大切な要素ではありますが、やはり何よりも重視すべきなのは、利用するご本人がその施設をどう感じているかという点です。
私の母もそうでしたが、高齢者にとって“新しい環境に通う”ことは、思っている以上に勇気とエネルギーが必要です。そのため、「ここなら安心できそう」「この場所ならまた来てもいいかな」と自然に思えるかどうかが、継続利用や生活の質に大きく関わってきます。
見学時、母が笑顔で「この人たち、なんだか優しそうね」と言った瞬間、私の迷いは一気に晴れました。パンフレットや立派な設備ももちろん大切ですが、“また行きたい”と思える感覚こそが、何よりの判断基準になるのだと強く感じました。
利用目的を明確にしておく
見守り中心でよいのか、それともリハビリを重視するのか——この“利用目的”をあらかじめ明確にしておくことで、施設選びは格段にスムーズになります。私の場合も、最初は「通える場所であればどこでもいい」と考えていましたが、実際に見学していくうちに、母にとって必要なのは“体の機能を改善すること”よりも“安心して人と過ごす場所”なのだと気づきました。
例えば、身体機能の回復を目指す方であれば、デイケアで専門的なリハビリが受けられる環境が適しているでしょう。一方で、日中の見守りや会話、軽い運動やレクリエーションを通じて生活リズムを整えたいという目的であれば、デイサービスの方がフィットする可能性が高いです。
このように、まずは「今、何を一番求めているのか?」という視点を家族で話し合い、ケアマネジャーにも共有することが、後悔のない施設選びにつながると実感しました。
私たち家族にとって必要だったのは、“安心して過ごせる居場所”でした。でも、それは人によって異なります。まずはご本人の希望や生活の課題を整理して、「どんな支援が一番助かるのか」を一緒に考えることが大切です。
送迎時間や入浴体制などの細かい点も確認
施設の場所やサービス内容に関する“細かな違い”が、実は日々の通所に大きな影響を及ぼすことがあります。例えば、施設があまりにも遠方だと、片道30分以上かかることも珍しくありません。その移動だけで利用者が疲れてしまい、到着後の活動に参加する気力がなくなってしまうケースもあります。特に高齢の方は、少しの環境変化でも体調に影響が出やすいため、「無理のない距離かどうか」は重要な判断材料です。
また、入浴サービスの頻度も見落としがちなポイントです。「入浴がある」と書かれていても、週1回しか対応していなかったり、混雑している日は順番が回ってこなかったりという施設もあります。私の母も「今日はお風呂の日って言われたのに、結局入れなかった」と不満をこぼしたことがありました。家庭での入浴が難しい場合は、施設での入浴が本人の清潔と気分転換の両方を担う大切な時間になりますので、回数や対応体制を事前にしっかり確認しておくべきです。
私も最初は「通える範囲ならどこでもいい」と考えていましたが、実際に通ってみると距離や時間、サービスの細かな違いが予想以上に大きく影響しました。ぜひ、地理的条件や入浴回数など、具体的な生活のリズムと照らし合わせながら検討してみてくださいね。
正解は「その人に合っているかどうか」
デイサービスとデイケア、どちらが優れているということは決してありません。それぞれに特長があり、目的も違います。大切なのは、「その人に今必要な支援が何か」「どんな環境なら安心して通えるか」をしっかり見極めることです。
私の母の場合、身体的なリハビリよりも、人とおしゃべりしたり、折り紙や簡単な体操などを楽しめる“ふれあいの時間”のほうが大切でした。認知症の影響で新しい環境が少し不安になることもある中、デイサービスのゆったりした空間と、スタッフさんの優しい対応が、母の気持ちを大きく支えてくれたように思います。
最初は「どこでもいいから通ってくれれば」と思っていた私自身も、母が自然と笑顔になれる場所を見つけてあげられたことで、「通わせる」のではなく「通いたいと思える場所」を選ぶことの大切さを実感しました。
施設を選ぶとき、「とにかくどこかに通わせたい」ではなく、「その人にとって居心地がいい場所かどうか」を見てほしいと思います。誰にとっても初めての介護、初めての施設選び。焦らず、何度も見学して、少しずつ理想の場所に近づけていけば大丈夫です。ご本人が「また行きたい」と言ってくれる場所、それがいちばんの“正解”だと私は思います。