こんにちは。佐々木真由美と申します。神奈川県で在宅介護をしながら、80代の母とふたり暮らしをしています。
在宅介護を続けるなかで、たくさんの悩みや壁にぶつかりながらも、少しずつ試行錯誤を重ねてきました。自宅で親の介護を経験し、生活の中で感じたリアルな気づきや工夫を、同じような立場にいる方に届けたいという思いで情報発信をしています。
介護の負担を一人で抱え込まず、ときには制度やサービスをうまく活用しながら、無理のない介護生活を一緒に目指していきましょう。
今回は、在宅介護生活を送る中で必ず知っておきたい「介護保険」について、できるだけ丁寧に、そして実体験を交えながら解説していきたいと思います。
私自身、親の介護に直面したとき、まず頭を抱えたのが「介護保険って結局何?」という問題でした。制度の仕組みも申請の方法も、聞けば聞くほど複雑で、役所の窓口でもらったパンフレットを前に呆然としたことを今でも覚えています。
当時の私は、介護保険を「使い方が難しい特別な制度」だと思い込んでいました。しかし実際には、正しい手順さえわかれば、介護する側にもされる側にも、これほど心強い味方はありません。
そんな自身の経験から、これから介護に向き合う方々が少しでもスムーズに動けるよう、この記事では制度の基本と、申請の流れについてわかりやすくお伝えしていきます。ぜひ、参考にしていただけたら嬉しいです。
介護保険とは?
介護保険とは、私たちが介護を必要とする状況になったときに、経済的な負担を軽減しながら必要なサービスを受けられるよう整備された、公的な支援制度です。私も親の介護に直面した際、この制度の存在に何度も助けられました。具体的には、介護にかかる費用の一部だけを負担する形で、さまざまな支援を受けられる仕組みとなっています。
40歳以上の人は、健康保険と一緒に介護保険料を支払っています
まず、介護保険は40歳以上のすべての人が対象です。会社員であれば給与から、年金受給者であれば年金から、毎月介護保険料が自動的に引かれています。
私自身も、若いころは「介護保険料なんてまだ関係ない」と思っていました。しかし、いざ親の介護に直面すると、これまで払ってきた保険料がこういう形で活きるのだと実感しました。
65歳以上の方(第1号被保険者)は年齢による介護が対象
65歳以上の方は、「第1号被保険者」と呼ばれます。この年代になると、加齢による体力の低下や病気のリスクが高まるため、年齢が理由で介護が必要になった場合に介護保険が適用されます。
私の母も、転倒が増えたり、日常生活にサポートが必要になったのは70歳を過ぎてからでした。「年齢だから仕方ない」と思う反面、ちゃんと支えてくれる制度があることに心底ホッとした記憶があります。
40歳から64歳までの方(第2号被保険者)は特定疾病が対象
一方、40歳から64歳までの方は「第2号被保険者」となります。この年齢層では、単に年齢だけで介護保険が使えるわけではなく、特定の病気(特定疾病)によって介護が必要になった場合に限られます。
特定疾病には、脳梗塞後遺症、若年性認知症、パーキンソン病などが含まれています。私の知り合いも、50代で脳梗塞を患い、介護保険を利用してリハビリサービスを受けることができたと聞きました。こういった制度があるおかげで、まだ若い世代でも必要な支援を受けることができるのです。
介護が必要なときに保険で支援を受けられる
つまり、介護保険とは「介護が必要になったときに、経済的・精神的な負担を軽減しながら、支援を受けるための仕組み」です。
私自身、介護が始まるまでこの制度をほとんど意識していませんでしたが、実際に使ってみて、これがどれほど心強いものかを身をもって知りました。
これから介護を考えている方も、ぜひ「知っておくだけ」で大きな安心感につながると思います。
どんなサービスが使えるの?
介護保険を利用すると、さまざまな支援サービスを、自己負担1〜3割という少ない費用で受けることができます。
私も親の介護を通して、これらのサービスに本当に救われたと感じました。特に在宅介護では、プロの力を借りることで、家族の負担がぐっと軽くなります。ここでは、代表的なサービスについて少し詳しくご紹介します。
デイサービス(通所介護)
デイサービスは、日中施設に通って食事や入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けられるサービスです。
私も、母の外出機会を増やすためにデイサービスを利用し始めたのが最初でした。最初は「行きたくない」と渋っていた母も、何度か通ううちに顔なじみができ、「お友達ができた」「楽しかった」と笑顔を見せるようになりました。介護する側にとっても、ほんの数時間でも手を休められる時間ができたことは大きな支えになりました。
ホームヘルプ(訪問介護)
ホームヘルプは、ヘルパーさんが自宅を訪問し、食事、排せつ、入浴などの介助や、掃除、洗濯、買い物といった生活援助をしてくれるサービスです。
私たちも、母の体調が安定しない時期には、定期的にヘルパーさんに来てもらい、安心して日常生活を送ることができました。家族だけでは手が回らない部分を補ってくれる存在の大切さを、実感しました。
訪問看護
訪問看護は、看護師さんが自宅を訪問し、医療的なケアや健康管理、リハビリの指導などをしてくれるサービスです。
母が一時期、床ずれのリスクを抱えていたとき、訪問看護師さんに定期的にチェックしてもらうことで、早めの対応ができ、大事に至らずに済みました。医療と介護のつなぎ役として、とても心強い存在でした。
短期入所(ショートステイ)
ショートステイは、短期間だけ施設に宿泊し、食事や入浴、リハビリなどのサービスを受けられる制度です。
家族が旅行や冠婚葬祭などで家を空けなければならないときや、介護に少し疲れてリフレッシュしたいときに、とても助かる仕組みです。私も母をショートステイに預けた間、心から久しぶりに自分の時間を取り戻せた記憶があります。
特別養護老人ホームなどへの入所
特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者向けの入所施設です。介護保険を使って比較的低負担で利用できますが、待機者が多く、すぐに入所できるとは限りません。
私もいざというときのために、早めに情報収集だけはしておこうと、見学に行ったことがあります。施設によって雰囲気や方針が違うので、納得できる選択をするためにも、事前の下調べが重要だと感じました。
福祉用具の貸与・購入助成
介護ベッドや車いす、歩行器など、介護に必要な福祉用具をレンタルできるサービスもあります。また、一定条件のもと購入費の一部を助成してもらえる制度もあります。
母の移動が難しくなったときには、歩行器をレンタルしました。自費購入だと高額ですが、介護保険のおかげで負担がぐっと軽くなりました。
住宅改修の助成(手すり設置や段差解消など)
家の中での転倒リスクを減らすために、手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材への変更など、小規模な住宅改修費用を助成してもらえる制度もあります。
母が自宅で安全に暮らせるように、玄関とトイレに手すりを付けました。ほんの小さな工夫ですが、本人の自立心を守り、家族の安心にもつながったと思います。
介護保険を使うには?申請から利用までの流れ
介護保険を利用するためには、まず「要介護認定」という公的な審査を受ける必要があります。
私も母の介護が必要になったとき、最初に戸惑ったのがこの申請の流れでした。何をどう進めればいいのかわからず、役所に何度も足を運びながら、少しずつ手続きを進めたことを覚えています。
申請からサービス利用開始までには一定の時間がかかるため、「もう少し様子を見てから」と思って後回しにしてしまうと、いざというときに必要な支援をすぐ受けられないこともあります。
だからこそ、できるだけ早い段階で準備を始めることが大切です。
ここでは、要介護認定を受けるまでの具体的な流れを、できるだけわかりやすく整理してご紹介します。
①申請する
申請は、お住まいの市区町村役所にある介護保険課で行います。
通常は、本人か家族が役所の窓口に出向いて申請書類を提出する形になります。私も最初は何を持っていけばいいのか分からず、手ぶらで行ってしまい、二度手間になった苦い経験があります。申請には「本人確認書類(マイナンバーカードや保険証など)」が必要なので、忘れず持参しましょう。
また、もし窓口に行くのが難しい場合は、地域包括支援センターに相談すると、申請の代行をしてもらうことも可能です。私は忙しくて役所に行けないとき、地域包括の担当者さんに代わりに手続きしてもらったことがあり、その迅速な対応に本当に救われました。
無理をせず、頼れるところには頼りながら、申請を進めるのが成功のコツだと感じています。
②訪問調査を受ける
申請後、市区町村から派遣された調査員が自宅を訪問し、本人の心身の状態を細かく確認します。
私の母の場合も、役所の担当の方が自宅に来て、日常生活の様子やできること・できないことを丁寧に聞き取ってくれました。調査は大体1時間弱で、食事、排泄、入浴、移動、認知症の有無など、細かい項目について質問されます。
私がそばについて補足説明をしたり、普段の様子を具体的に伝えたりすることで、より実態に合った認定につながったと思います。ポイントは、「良いとき」だけではなく、「普段困っていること」「悪いとき」の状態を正直に伝えること。
つい家族も見栄を張ってしまいがちですが、正確な支援を受けるためにはリアルな情報をきちんと共有することがとても大切だと感じました。
③主治医意見書を提出する
訪問調査と並行して、本人の健康状態について、主治医から「主治医意見書」を作成してもらう必要があります。
この意見書は、介護認定審査会で重要な判断材料となるもので、身体機能の低下具合、認知症の有無、慢性疾患の状況など、専門的な視点からの評価が記載されます。
私の母の場合も、かかりつけ医にお願いして作成してもらいました。普段から母の体調をよく知ってくれている医師だったので、生活の細かい変化まで反映された、非常に実情に沿った内容になっていたと思います。
もし主治医がいない場合や、普段あまり診てもらっていない医師にお願いすることになる場合は、あらかじめ家族側から生活の様子を伝えておくと、より正確な意見書を書いてもらいやすくなります。
ここでも「普段どのような支援が必要か」を包み隠さず伝えることが、適切な認定につながる大事なポイントだと、私は実感しました。
④審査・判定
訪問調査の結果と主治医意見書が揃うと、それらをもとに市区町村の「介護認定審査会」が審査を行います。
審査会には医師や看護師、社会福祉士など、専門的な知識を持った複数のメンバーが参加し、客観的な視点で要介護度を判定します。
私の母の場合も、訪問調査で伝えた普段の困りごとや、主治医がまとめてくれた体調の詳細が審査材料となり、適切な認定結果につながりました。
このプロセスでは、家族が直接審査に立ち会うことはありませんが、「きちんと伝えた情報が審査に活かされている」という安心感を持つことができました。
審査は形式的なものではなく、あくまで本人の生活実態に即したサポートを受けるための大切なステップ。だからこそ、前段階の申請や調査時に”正直な情報”を伝えることが本当に大切だと痛感しています。
⑤認定結果が届く
審査が完了すると、申請者のもとに認定結果が郵送で届きます。
この結果は、大きく分けて次のように分類されます。
●要支援1・要支援2
・基本的な生活動作はできるけれど、一部に支援が必要な状態。
・例:買い物や掃除にやや支援が必要、軽い運動機能の低下など。
●要介護1〜5
・日常生活においてさまざまな介護が必要な状態。
・数字が大きいほど、介護度(必要な支援量)が重いことを意味します。
私の母も、最初の申請では「要介護2」と認定されました。 最初にこの通知を受け取ったときは、なんだか正式に”介護が必要な状態”と認定されたことに、少しショックを受けたのを覚えています。
でも、同時に「これでやっと堂々とサポートを頼める」とホッとした気持ちもありました。
認定が出ることで、利用できるサービスの範囲や内容も明確になります。 この結果に応じて、次にケアプラン作成へと進んでいくことになります。
焦らず、少しずつ一歩一歩、できることから始めていきましょう。
⑥ケアプランを作成する
要介護認定の結果が出たら、次は具体的にどんな支援を受けるかを決めるため、「ケアプラン」を作成します。
ケアプランは、ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら作り上げていきます。
私も母の介護で最初にケアマネさんと面談したとき、母の体調や性格、生活スタイルについて本当に細かくヒアリングされ、「こんなに寄り添って考えてくれるんだ」と感動したのを覚えています。
「デイサービスに週何回通うか」「ホームヘルプはどの時間帯に来てもらうか」「福祉用具は何が必要か」など、生活に密着した内容を一緒に考え、無理なく続けられる計画を立ててもらいました。
ポイントは、すべてを完璧にしようとせず、”必要な支援だけ”を上手に取り入れること。
介護する側・される側、どちらにとっても無理のないプランにすることが、長く続けていくコツだと感じています。
⑦サービス利用スタート
私たち家族の場合、申請をしてから正式な認定結果が出るまで、約1か月という時間がかかりました。この間、必要な手続きや訪問調査、主治医の意見書作成など、さまざまなステップを経るため、決して短い期間ではありません。
当時は、母の体調が心配で早く支援を受けたかった一方、制度上どうしても一定の時間が必要だという現実を前に、焦る気持ちと向き合う日々でした。
だからこそ、介護が必要かもしれないと感じたら、迷わず早めに申請手続きを進めることを強くおすすめします。
準備は早ければ早いほど、いざというときに慌てずに済みますし、家族にとっても大きな安心につながると、私自身心から感じています。
介護保険は”使ってこそ”意味がある
最初に介護保険制度の話を聞いたとき、私は「難しそう」「手続きが面倒そう」と、正直ネガティブな印象を持っていました。
しかし、実際に介護生活に直面してみると、介護保険は私たち家族にとって、想像以上に心強い支えになってくれた存在でした。
頼れるサービスやサポートがあることで、介護する側の肉体的・精神的な負担は大きく軽減されます。頑張りすぎて自分自身をすり減らしてしまう前に、ぜひ制度の力を積極的に活用してほしいと、心から思います。
私自身、もっと早く動いていれば良かったと何度も後悔しました。
「まだ大丈夫」「家族でなんとかしよう」と思ってしまう気持ちは痛いほどわかります。 でも、介護は長丁場です。制度の力を借りることは、決して”甘え”でも”無責任”でもありません。
むしろ、周囲の力を上手に借りながら、無理のないペースで介護を続けていくことこそが、本人にとっても、介護者にとっても、いちばん優しい選択だと私は考えています。
この記事が、これから介護を始める方、すでに介護に奮闘している方にとって、少しでも背中を押すきっかけになれたら嬉しいです。
これからも一緒に、できることから、少しずつ進んでいきましょう。